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かーずSPの戯れ言

かーずSP管理人が駄文を語ったりするブログ

『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』がタイトル通り面白かった件

面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録  三木一馬 (著)


電撃文庫の編集者で、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『灼眼のシャナ』『アクセル・ワールド』など数々のヒット作の担当者である三木一馬氏による本。これが4重の意味で面白かった。

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1:人気ライトノベルの誕生秘話や創作裏話がてんこ盛り

俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が生まれたきっかけが「『GTO』に出てくるギャルが、エロゲー好きで、妹なんですよ!」とか、御坂美琴がなぜ短パンを穿いているのか」、「灼眼のシャナ」で受けるために仕掛けたフック、「ソードアート・オンライン」や「魔法科高校の劣等生」がWeb版に負けないために工夫した点など。

あのライトノベルのあの要素は、こうして生まれたという裏話エピソードが盛りだくさん。

例えば「俺の妹」の二巻で、「あやせが最強すぎて、京介では絶対どうやっても勝てない、やべー!」と伏見先生と三木氏が焦った時に、それをどう乗り切ってあの結末にたどり着いたのかというのは興味深い。

僕らが作品に触れていて、漫然と「面白いな~」ってだけで素通りしてしまうところにも、ちゃんと仕掛けなりロジックがあるんだという事をわかりやすい文章で書かれている。

たとえその作品を知らなくても、「面白い作品」を作るための試行錯誤を成功談・失敗談ともに紹介しているので、なるほど納得ができるんですね。

2:人気職業「編集者」がどんな仕事なのか、かいま見える

作家との打ち合わせ、イラストレーターの選定など、作品を生み出す側から、プロモーター(広報宣伝)、アニメ化したらこういう仕事が増える、などを具体的に語っているのが興味深い。

僕は昔から「仕事」をテーマにした話は自分が体験できない人生経験を覗き見られるところが大好きなので、漫画では「シロサギ」や「ウシジマくん」、アニメだと「SHIROBAKO」みたいな「職業モノ」って、それだけで興味がそそるわけで、本書では特にイラストレーターを編集者がどうやって選ぶのかが面白い。

三木さんいわく「内容と絵のタッチをずらす」んだそうで、「灼眼のシャナ」は文章が硬めなので、逆に可愛い系の いとうのいぢ先生を選んだそうです。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない」は文章を読んだ時の印象であるギャルギャルしい、等身の高いケバい画風ではなく、猫耳イラストレーターのかんざきひろ先生をチョイスで、イラストと物語の化学反応が起こしたそうです。

3:小説(創作物)の書き方のノウハウ

「面白い物語を作るには?」という疑問に対する答えがここにあります。

トレンド、キャッチーさ、カタルシス、魅力的なキャラクターの条件、やってはいけない事など小説を書くときのコツを、「キリトはこうした、上条当麻の場合は~、『みーまー』の時には~」といったように、面白い小説を書く秘訣を、人気作品・キャラを具体例にして解説してくれる! しかも担当編集が!

「家訓」という、最初にブレない確固たる芯を決めて、「想定読者」を意識して、主人公には「憧れと愛嬌」(長所と欠点)を盛り込む、という具体的な指南がめっちゃ参考になります。

これはオタクならお金払ってでも聴きたい講義なんじゃないでしょうか(まあ本代は払ってますけど!)

4:三木一馬氏の仕事術

理系大学で、メディアワークスに入るまで小説をほとんど読んでなかった落ちこぼれ編集者による、前向きな仕事との向き合い方は、自分も参考になりました。

プラスの加点法で仕事と向き合う

んだそうで、失敗して落ち込んでも、「物語だと、こういう展開は伏線で、そのあと大団円が来る(予定)だから頑張ろう」とか、作家さんとの打ち合わせでも最初はひたすら良い点を褒めていく。

>人生を充実させることは、あなたの「いいね!」ポイントをもっともっと増やしていくことなのです。

引用元・本書のP287より

は来年の座右の銘にして、仕事に臨みたいです。んー面白かった!



あとこれは、ネットすべてに言えることですが、クリエイターはネットに書かれた一つの悪評を気にして萎縮してはいけない。「静かなるBUYサイン」を信じて進め!というのは力強い!

三木さんはジョジョの大ファンで漫画はもちろん、グッズもゲームもめっちゃ買ってるし展覧会にも行ったけど、荒木先生にファンレターも読者アンケートはがきも出したことはない。

ただ買うだけ。でもその数字が作り手に返ってきて「いつも声は発しないけど、BUYという行動で応援してくれる大勢のファン」を大事にしよう。

そして彼らに最高の作品を送り届けましょう。そうすれば、今よりももっともっと世の中が面白さで溢れるはずです!

というのは、クリエイターだけにとどまらず、「TwitterなどSNSで罵詈雑言を受けてもシカトして、もっともっと大事な人に目を向けよう、そのほうが幸せになれる」ってことなんじゃないでしょうか。


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響いたページに紙を挟んでいったらこんなになっちゃいました。